クラシック・ギター製作家インタビュー:ドミニク・ワース (ドイツ)

クラシックギター製作家インタビュー_ドミニク_ワース_ドイツ

今回のギター工房インタビューはドイツのドミニク・ワースさんです。

 

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

始めは演奏するのが好きでギターを始めました。すぐに私の安物のギターに満足できなくなり、良い音のするギターが必要になりました。お金がなかったので、自分のギターを製作することにしました。そのようにして数人のギター製作家達を訪ねました。彼らはギター製作の基礎を教えてくれ、これは大きな助けになりました。始めて製作した数本のギターで成し遂げることができた音に我ながらとても驚き、この仕事が私の情熱となったのです。
その後、私は世界で唯一弦楽器に関する勉強ができる、ツヴィッカウ大学シュネーベルク芸術科でギター製作を学びました。この時期、ギターに於ける音響学について理解を深めることができました。大学では芸術を大学院では撥弦楽器製作の修士号を修めました。
在学中、スペインのグラナダ近郊のギター製作家、アンドレス・D・マルビと働くことができました。そこでは伝統的なギター製作を学ぶことができ、多大なる影響を受けました。

今日、私の工房ではクラシック・ギターとフラメンコ・ギターのみを製作しています。

 

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

私は伝統的な手法を用いて現代的な音を探しています。音量のある楽器を作る為だけにダブル・トップ・ギターを作る事に興味はありません。 私にとって、パワーよりも大事な側面が沢山あります。私は音色を自在に操れ、簡単に歌うことができる、丸く暖かい高音、サステインの長い低音、綺麗で明るいハーモニー等を求めています。最近製作した私のギターでは、ロベール・ブーシェ、ダニエル・フリードリッヒ、アントニオ・マリン等が用いたクロス・スティッフネスを使う事により、私の理想像として描いている音にとても近づいています。
加えて、表面板に出来る限りのエネルギーを保つ為に強固なフレームの様なものとして働いている、とても堅いあばら状構造を用いています。
この種の工法と共に強靭で力強い楽器、クリーンで明るく、色彩豊かで持続する低音を得ることができました。

 

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

弾き易さとはとても個人的なものなので、とても複雑で困難な問題です。まず最初に言える事は、それぞれの演奏者はそれぞれ違った大きさの手を持つため、まず始めにどんな種類のネックが手に馴染むのかを知る必要があります。幅の広い、又は狭いナットが必要なのかどうかは演奏者の手の形状に依存するので、ぴったりと手に合ったネックの幅を見つけるまでいくつものギターを試さなければなりません。
加えて、弦高は重要です。左手が素早く、また疲れる事なくより少ない努力で移動出来る様に弦高は可能な限り低くあるべきです。弦高は良い形ををした指板だけの問題ではなく(もちろん指板は完璧でなければいけません)、表面板の作りが重要です。例えば、頑強で堅い表面板の場合は、柔軟なものよりもより一層弦高を低くする事が可能になります。
しかし、どのギターでも最小限のビビりはあり、演奏者の右手のタッチが強い、または弱いのかを知る為に、実際に演奏するのを見てから弦高の調整をするのが重要です。これが音がビビることなく、快適に演奏できるような完璧な調整をするための唯一の方法です。

 

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

私は伝統的な手法で作られた全ての楽器をセラック・ニスのみを使って仕上げています。他のニスと比較してセラックはかなりの長所を持っています。シェラックのとても薄い保護膜は合成ニスと比べて表面板の振動のロスが少なく、ギターの遠達性を高めます。セラックの他の長所は、その可逆性で、メンテナンスが容易な事です。

 

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか? 

もちろん、女性や手の小さい演奏者にとって快適で、手を広げなくて済むショートスケールは大変な利点をもたらします。

640mmのスケールでは、特に大きな音質の差はないと思います。

 

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

私の意見では3本以上のギターを試奏するべきではありません。あまりにも多様な印象で混乱してしまうからです。新しいギターの音を判断する為に試奏する時は、今現在あなたのギターで練習している曲を弾かないことをお勧めします。技術的な難しさを忘れて、リラックスして唯一音に集中できる様な何かを弾いてみて下さい。また、曲の一部分の短いパッセージのみを試奏してみるべきです。そして、それと同じものを他のギターでも弾いてみるのです。あるギターで一曲丸ごと試奏してみて、他のギターでは他の曲をまたまるごと試奏する事は無意味です。

 

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

例えば、リオ・ローズウッドの入手の難しさなどは大した問題ではないと思います。リオがインディアン・ローズウッドより良い音がするというのは大きな俗説です。例えば、自然のリオ・ローズウッドの後板はもっと真っすぐで幅の狭いインディアン・ローズウッドより柔軟性があります。そのような場合には、私は常に良い音がする楽器を作る事に貢献するインディアン・ローズウッドを選択します。

 

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

ギター製作家は常により良い音がする楽器を探し求めています。そのようにして将来様々な異なるアイデアやコンセプトを目にするでしょう。しかし、それらの新しいコンセプトは伝統的なギターの音を置き換える事はないでしょう。なぜなら、我々はこの美しい楽器を改良する必要がない事に再び気がつくからです。

ギャラリー: 

クラシックギター製作家インタビュー_ドミニク_ワース_ドイツ ビデオ: 
Torres Guitar 1864 - FE 17 Copy (Tárrega Guitar) by Dominik Wurth (クリックで再生)
Torres Guitar 1864 - FE 17 Copy (Tárrega Guitar) by Dominik Wurth (クリックで再生)

コメントを追加