ギターの弦の種類・チューニング・補正方法について: ギター製作家ランツ・リッチフィールド(オーストラリア)さんとの対談

弦や音程とその補正方法: ギター製作家ランツ・リッチフィールド(オーストラリア)さんとの対談

ギターの音に大きな影響を与える弦ですが、異なる材質・テンション・ゲージ等まさに多種多様です。今回はオーストラリアのギター製作家であるランツ・リッチフィールドさんとの弦や音程とその補正方法をテーマにした対談をお届けします。

 

L : ランツ・リッチフィールド

K : 筆者

 

 

: ギター製作家の人達は弦について好みがあるのでしょうか?そしてギターの音の特徴に影響する「弦」という部分にどう対処しているのでしょうか?意見をお聞かせください。

 

: 私は弦を大まかに2つのカテゴリーに分類します。一つは伝統的なナイロン弦、他方は最新のプラスティック弦(たまにカーボンと呼ばれますが元素としてではなく合成物としてのカーボンを指しているので、実際はカーボン繊維の様な本来の意味での「カーボン」ではありません)です。 製作過程である特定の弦を想定している製作家もいるでしょうが、私の考えではギターは市場に出回っているどんな弦にも対応するべきで、特定の弦に束縛されるのではなく相補すべきものです。中にはテンションがより強い傾向にある最新の弦に対して否定的な製作家もいますが、私はギターの構造的な理由で心配する程それらの弦のテンションが高いとは感じません。ある特定の弦を、市場に出回っている中で最高のものだと信じて自らのギター用に推奨する製作家もいますが、私は例え音色や性能に大きな違いがあったとしても、弦の選択は単に個人的な好みの問題だと感じています。 演奏者とギターと弦の関係は予測するには複雑すぎます。

この2種類の弦の持つ、そして相反する幾つかの特徴として私が感じるのは、伝統的な弦はより暖かい音を持ち爪にあたる感触もより柔らかいというものです。とても豊かで甘い音を出す傾向があります。しかし、音色について語る事はそれぞれの耳や技術に依存し少々主観的な面もあります。最新の弦は総じて音量・ダイナミック・サステインを伴った性能面で優れているように思えます。その音色は通常良いアタックと分離を伴ったクリアで明るい音がします。これは恐らく、最新のプラスティックはより高密度なので、同様の密度とテンションを得る為のゲージ(弦の太さ)を細く抑える事が出来る為でしょう。これにより内部抵抗を少なくし、能率を良くする事が出来るのでしょう。これには一つ欠点があります。より小さい直径の弦により高いテンションを組み合わせることによって、爪に対する負担を感じる事になるかもしれません。一つの利点は伝統的な3弦に見られたチューニングの問題や音色の違いによる問題が軽減された事です。これは伝統的な3弦のとても太い直径に起因する問題です。

 

私の経験では新しいプラスティックは時たまチューニングがより不安定で、明確に補正が必要です。この問題はどのようにギターを補正するのか、という話題につながりますがそれには色々な方法があります。私の意見では一般的に幾つかの事柄がチューニングをし辛く、又は不均一にします。それらは高いアクション(弦高)・最新のプラスティック・一般的なフレットの立削り工法と補正法です。ギターそのものに由来する事柄もありますが、これはまた別の話です。

もちろんこの2種類の主な弦の種類の中で、それぞれのメーカーは選択の幅が広がるように各々異なるバリエーションを生産しています。普通誰でも個人的に好みの弦のメーカーやモデルがあります。異なる種類の弦を混ぜて自分に相応しいバランスに整えることも一般的です。私がよく見る最も一般的なカスタム化は最新プラスティックの3弦や2弦を伝統的な弦と組み合わせる方法です。これは普通1弦から4弦までの音色をより均一にする為です。割と最新プラの1弦は少々メタリック/鋭すぎる/どぎつ過ぎる音だと感じる人が多く、代わりに伝統的なナイロン弦にするようです。より長持ちする弦、より安価な弦、より入手しやすい弦等ありますが、それらの全ての要素は弦の交換頻度に影響します。

 

 

: 何故最新のプラスティックは時々チューニングの信頼性に欠けるとお考えなのですか?

: 私は科学者や物理学者ではありませんので何故そうなるのかは想像するほかありません。私の設定方法で最新プラスティックに対処していた時に偶然気がつきました。主に音程に注目しながらコンサート用の高いアクション(弦高)を求めていたときです。弦のチューニングに影響する事で唯一思いつくのは、より小さい直径とより高い密度は若干大きな公差(機械工学などで許容される差。 基準値と許容される範囲の最大値と最小値の差を指す)を必要とすることです。この事が製作家がギターをコントロールし辛くしているのかも知れません。公差が大きいとよりシビアになるので、もしかするとこれが一層摩耗・損傷・製造むらの影響を受けやすくしているのかもしれません。概してこれらの弦はとても良質ですが、厳しい目でチューニングの誤差を見たときに弦のセット間でむらがあるように感じます。

 

 

: イントネーション(音程)と補正方法についてお聞かせください。

: 最高のチューニングを得る為にはギターを組み立てる上で沢山の要素があります。第一にナットとサドルの位置、フレット・ポジションの正確さ、そしてアクション(弦高)です。弦の種類もチューニングに影響し、一貫性と補正が必要です。主に微調整の為にはあるギター特有の癖に由来する他の要素があります(たまにとても目立つことがあります)。これらの問題はギターの持つ残響に由来するもので、弾かれた音の音高と干渉することに関係します。その他の問題としては近代の平均率による調弦に関係し、フレットが正確でも簡単に音程が変わってしまう楽器があります。長いサステインと豊かな音を持つギターは、パーカッシヴで分離した音のギターと比較すると、より一層楽音と倍音が重なりあう可能性を秘めています。

前者の多くの点は後者のものより重要性が低いですが、特にそれぞれの弦の間でオクターブや5度などある特定の音程の良さが求められるときにチューニング上の問題が出るかも知れません。小さい誤差が不幸にも積み重なっていきます。製作家はこれを最小限に抑える為に大変苦労する事になるかも知れません。これらの微少な誤差は弦のバラツキによったり、演奏家の技術に依存しているかもしれず、これらが原因を解明するのを難しくしています。そのため顧客の懸念が特にチューニングの場合は、製作家は通常出来るだけ規格に照らし合わせる事を好みます。私がもしチューニングの問題に対処する時には、顧客にある一定の弦高・弦のメーカーとモデルをあらかじめ前提とするようにお願いしています。私のギターの場合は通常ナットとサドル部分でそれぞれの弦毎に補正します。フラメンコ・ギターの場合は弦高が低い事に加え、このジャンルの異なるニーズによりそのような補正は普通必要としません。

高い弦高を好むには沢山の理由があります。個人的にはコンサート・ギター用には高い弦高にする事を好みます。しかしこれは完全に個人的な事で、喜んで顧客の望む弦高にします。それぞれの人が異なる要望を持っていますが、総体的に顧客が強く演奏し、ビビリを最小限に抑えるには高い弦高は良いアイデアです。ギターによっては他のギターより硬く感じるものがあり、それらのギターに高い弦高では弾き辛いかも知れません。これはギターの設計と表面板の材質に関係していて、私の意見ではギターの年齢にもよります。もちろん古いギターは時間の経過と共にネックのはめ込みが変わってしまった場合は、しばしば高い弦高をもちますが、それはまた別の話題です。軽量に作られたギターはたまにネックの固定問題を引き起こします。多くの場合は古いフラメンコ・ギターでそのような例を見かけます。